会社はじめて7年。今の社内には創業以前の前職時代からの古い付き合いの人間はたった一人になりました。彼の名前は佐藤正和と言います。普段はあまり主張はないですが、がんこで愛情深く、心から部下に慕われる数少ない人です。言ってることやってることが乱暴な時もありますが、リーダーらしいリーダーだと思います。

そんな彼も昔から親分肌だったかといえば、当初は先輩に誘われて僕が店長だった会社に入社してきた素行不良の青年でしたが、当時の彼女との付き合いを機に、一念発起して不動産屋に転職してきました。 そういう理由もそうですが、わがままで我が強く、どこか自分に似てる部分が憎めない青年でした。

その後会社をはじめてまもなく、いろんな友人知人が会社に来てくれて、ほんの少しですが社内の人たちと話してくれて、その感じを僕に伝えてくれることがよくありました。その中で「佐藤くんは松田さんの本当の部下ですね」って言ってもらえることがとても多かったのですが、その当時の僕は理由を聞いてもいつもピンときませんでした。 

あるとき社内で僕が社長の立場を糾弾されたことがありました。内容はここでは触れませんが、政治的な動きや責任逃れが横行し、最後の矛先が僕に向いたことがありました。僕の性格とキャラが災いしたのか、当時は味方になってくれる人が随分少なかったのですが、そんな中、佐藤くんだけ僕のところに結婚の報告にやって来ました。

佐藤:「松田さんのおかげで結婚して家庭まで持てるようになりました。ありがとうございます。」 
松田:「え?ああ。そうか。そんなおめでたいことがあったのに。こんな状況で悪いな。。」
佐藤:「その話ですか。俺はよくわかりませんが、俺達も舐められましたね。」
松田:「・・・・・。」 (その後隠れて泣いたかどうかは、ご想像にお任せします。)


人間関係というのはたった一度のすれ違いで最悪の状態になることもあれば、たった一言の心に刺さる言葉で一生ものの信頼関係になることもあるんだと知りました。 当時いろんな情報が錯綜する中、上司に疑いがかかった時に、邪推せず冷静でいることが出来るのは、逆に僕ならできたかどうか自信はそこまでありません。

実際にはいい話ばかりではありません。 あるとき僕が細かい数字に無頓着な時があって、そんな中で佐藤くんが年間の成績がTOPだったことがありました。そんなときそこに関心が持てずいつものように先輩後輩の感覚で茶化していたら、「部下の頑張りに労いの言葉もかけられないなんて社長としてどうなんすか?」と叱られました。

「およそ主君を諌めるものの志、戦いで先駆けするよりも大いに勝る」と云います。(※常山紀談)



誰だって社長や上司に向かって、悪い部分を指摘したり、まして面と向かって問いただすのは勇気が要ります。少なくとも自分の立場や保身を考える人には到底言える言葉じゃありません。もっといえばそういう自分の立場を考慮せずに放たれる言葉は、同じ諫言(諌める言葉)としてもその重みが全く違います。

そういうときにいつも僕が何を思うかというと「こいつのいう事聞いとけば間違いないだろうな」ってことです。なぜなら僕が部下の立場のころ、上司に諫言する時は、会社や部下のことだけを考えていたので。もちろん彼にも悪い部分はたくさんあると思いますが、そういうことじゃないんですよね。ようは気持ちのいい人間かどうかってことが人間関係ではとても重要な気がしますし、そういう人は本当の財産だと思います。

今では彼も営業部長の立場になり、昔の僕のように糾弾されたり、 部下と切磋琢磨しながら真の実力に磨きをかけている最中だとは思いますが、人に投資する立場の人間としては「彼に投資してダメなら諦めよう」と思える数少ない人材であることは確かです。そして必ずホンモノになって組織を牽引してくれると信じてます。

というかんじで、"おぎやはぎ"の ように身内を褒めちぎる内容になりましたが、実際に嘘もないオーバートークでもない、ありきたりではありますがうちの会社の歴史の一部です。紆余曲折、七転八倒の末の今の組織とそのメンバーですが、もみくちゃになりながら、それでもなお今こうして一緒に仕事をしているメンツは頼もしい奴が多いです。

いずれまた新陳代謝や職位の循環はあるのかもしれないけど、今この時を一緒に仕事できるのは、太い信念と動じない心、何よりもそれぞれ各個人が自分を信じ抜く自信を持てるだけの努力を積み重ねてきたからではないかと感じています。 「逃げない」という選択肢がどれほど価値が大きいか、それは逃げなかった人しか知ることはできませんから。

松田