前回の投稿「求人サイトにとって一番おいしい顧客は誰なのでしょうか」が比較的好評でしたので、補足と合わせて追記してみたいと思います。

はじめに
前回の投稿を簡潔にまとめると、離職率の高い企業は求人サイト運営者にとって上得意の顧客であり、業務上必然的に求職サイト側はそういった企業を美化してしまう傾向があるという点です。ですので今回は慢性的人不足の原因と言える、「採用ミスマッチ・評価への不満・人間関係」の問題点を踏まえ、これらの解決策を考えてみたいと思います。

不思議な問題
まず前回記述しましたが、採用ミスマッチと評価への不満は完全に会社側の下準備の問題だと言えます。ところが興味深いことに、どんな人材が欲しいのか理解もしていない企業にも、おかしなことにすでに人が存在しています。これはつまり戦略なんかなくてもすでに人材はいるということなんです。

経営者は創業期にも人材を探せるだけ探します。そしてこのフェーズで採用ターゲティングとされる人材には0から1を創るかのようなスキルやタフネスのある人材、もしくは0を0とも思わない図太さ(バカになれる人)が必要とされます。そうなんです。起業家(0から1を生む人)と創業メンバー(バカになれる人)がそろえば、ひとまず起業できると考えられます。

革命家とプロフェッショナルの違い
では成長期はどうでしょう?どうもここからは先ほどの創業メンバーだけでは雲行きが怪しくなってきます。なぜなら創業メンバーは革命家ではありますがプロフェッショナルではありません。口コミや縁者で採用が続けられれば、0を0と思わないバカになれる革命家たちが集まってくれると思います。ところが悲しい現実として、革命家は革命後に革命を続けるわけにはいかないのです。

つまり革命後の成長期には競合他社との差別化のため、1を2にするプロフェッショナルとしてのスキルをもつ人材を育成するか、もしくは採用により人材を調達することが必要になってきます。
フェーズ別必須習得スキル















しかし僕を含む革命家たちは成長戦略において素人です。"起業"と"経営"の違いにもなかなか着目できません。起業後に採用戦略として必死で創業時の必須スキルを持つ人材を積極採用すると、求職者との間で確実に採用ミスマッチが生まれると考えられます。

零細企業で採用ミスマッチの起きる原理
創業に参加できるのは「0を1にできる人」か、「バカになれる人」だと説明しました。原則的に0を1にできる人、もしくはそれがやりたい人は他人の傘下に入りたがりません。そんな人材は自分で起業しますね。もう一つバカになれる人というのは、人を信用できないでバカになれません。信用できるリーダーや仲間がいると思うからバカになれるのです。これは縁故者でつながる企業が強い理由だとも言えます。

その上で考えてみました。起業をしたくて求職している人も、縁故者を探すために求職サイトを探している人も求職者市場に存在する確率は高いのでしょうか?そして企業側は創業メンバーを探すのではなく、成長期を支える人を探したくて求人しているはずですよね?こうしてみると成長期に欲しい人材像がターゲット出来ていない企業が、延々と採用ミスマッチを起こすのは自明の理だと分かってきます。

成長戦略は必要か?
さて、本質的問題に移ります。採用ミスマッチの原因は創業メンバーと成長期に必要な人材の違いにあることは分かりましたが、ではいったいどんな人材が成長期に必要なのでしょうか?それは企業によってさまざまだと言えます。そこには成長戦略が必要になり、そのために必要なスキルをもっていそうな人、育てていきたい人物像、そのための最低習得スキルは企業によって全く異なるからです。

さらに一呼吸置きます。企業それぞれの成長戦略と言いましたが、成長戦略は目指すべき方向を定めないで立案できるのでしょうか?それはかなり困難を極めると思います。仮に利益至上主義だとしても、そのことを告知するかどうかは別として、経営陣はその利益至上主義のための理想像を確立するしか、成長戦略は根本的に描けないからです。

理念やビジョンは必要か?
経営者が企業の理想像を確立したとしても、それを社内で共有できなければ社員は悪気なくベクトルを散漫にしてしまいます。そのような企業が走り続けるためには、経営者がこの先もずっと一人で全員の手綱を締めていかなければ不可能です。ところが仮にこれが非効率だと思うなら、社内で共有できるような理念やビジョンや行動指針を持てば少しづつ状況が変わっていくと思います。
理念は必要か?








一人ではなくたくさんの人の力で企業を前進させていくために、共有するべき理念やビジョンや行動指針が出来上がれば、それに基づく成長戦略は、経営陣だけではなく社内から湧き上がるように出来上るはずです。その成長戦略に必要になりそうな人的リソースをターゲットすれば、おのずと採用戦略は明確になり、ミスマッチな人材を採用することは根源的に解決すると考えられます。

幹部が育ってないと何もできない
成長戦略に基づく採用のためには、成長戦略に基づく人材育成の準備が必要になるはずです。せっかく採用したポテンシャルの高い人材を、成長戦略に組み込んで能力開花させていくためには、教育プログラムなしには成立しないでしょう。この教育プログラムがなければ能力の基準・評価がバラバラになり、結局社内不和や不平不満の残る人事考課の温床となります。

成長戦略から派生させた必須スキルの設定、その能力向上を判断する評価基準、公正で公平な判断を行える人事機関といった下準備は、理想を描く経営陣ではなく、現場を熟知する幹部陣にしかできません。つまりこういった成長期の必須スキルを幹部陣が持ち合わせていなければ、延々として創業ゾーンを抜け出せないという結論になります。そのためには幹部育成が最重要課題になります。

成長期必須習得スキルを幹部が習得するために
幹部育成のために最も重要なことはなんでしょうか?いろいろあると思いますが、まず大前提に幹部が成長戦略に同意しているかどうかが重要だと言えます。そもそも経営陣が重要視していることを幹部陣はしっかりと理解しているのでしょうか?幹部陣にすら重要性が伝えられない経営戦略しか持ち合わせてないのであれば、経営陣はまずそこから改善をかけていく必要があるかもしれません。

では幹部陣に成長戦略の重要性が理解してもらえたとして、どのように成長期のスキルを習得させていく必要があるのでしょうか?これは非常に難しく、創業期に幹部だった人材は成長期に必ずしも幹部のスキルを持ち合わせているとは限りません。成長期を支える幹部に必要なスキルが理解できない人はどうやってもスキル習得できないからです。まずは成長期に必要なスキルを理解してくれる人を幹部にするか、何度も根気よく理解してもらえるまで説得を続けていくしか方法はないと言えます。

まずやってみる人材
とにもかくにもここまできたら経営陣が口出ししても仕方がないと思います。経営陣が立てた計画を現場で実現していく人材は経営陣の中にいては意味がありません。経営陣でもなく自分自身で考える力を持つ人材は育てるかヘッドハントしかないと先ほども書きました。中小企業の財務状況を考えるとコストをかけない選択であれば育てるしか手立てはありません。

最難関になりますが、自分で考える人を育てるためには「教えないこと」です。はじめのうち問題提起と課題を与えたとしても、とにかく手や口を挟まず自分で考えさせて失敗をさせることだと思います。またその失敗から自力で問題提起させ課題を生み出せるようにするには、やはり教えないことだと思います。一言でいえばまずやってみる人材に企業が全身全霊で「集中投資」していくことだと思います。

まとめ 
社内リソースを駆使して成長戦略を立案し幹部陣の育成ができれば、おのずと育成プログラムが確立し、育てたい人材をターゲットするようになり、そのための採用戦略が出来上がると思います。考えれば考えるほど精度の高い採用戦略になるでしょうし、逆に思考を放棄して裏付けなく単純化してしまうと、創業メンバーをターゲティングした安易な採用戦略(新卒、中途関係なく)になってしまいます。

僕自身この業界にいて、そんなターゲティングができている採用を前例としてほとんど知りません。成長を求める自社に必要な人材はどこにいて、どのようにターゲティングするか。そのためにはまずはじめに、今日僕がブログで書いている以上の徹底的な準備が重要になるのではないでしょうか?

最後に、僕の経験が何かの役に立てば光栄です。

松田